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霧の岬で船頭を手招きした海坊主

所在地千葉県夷隅郡御宿町岩和田(岩和田港)
年代現代
登場鈴木キク・藤かおる
出典現代民話考 ― 偽汽車

どんな伝承か

御宿町岩和田の海女が語った話。四、五年前の夏の凪の日、岩和田の港から舟が漁に出た。この辺りの海女漁は、妻が潜って夫が命綱を握る夫婦舟である。夕方近く、音もなく霧が立ちこめ、空も黒雲に覆われて暗くなったので、皆で声を掛け合って港へ急いだ。港へ入るには暗礁の多い難所の岬を回らねばならないが、隣の集落の船頭だけが舟を岬へまっすぐ向けていく。仲間の舟が取り囲んでようやく引き戻すと、船頭は真っ青な顔で、灯りのような中に波間から顔を出した者が手招きしていたので港かと思ったと言う。妻には何も見えていなかった。その日から船頭は憑かれたようにふらつき、四年ほどして亡くなったという。

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※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません

出典の文献について

現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))

『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。

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