海を荒らして恋人に会った海女と大あわび
どんな伝承か
岩和田の海には大きなあわびがいて、その殻に触れると海が荒れるといい、海女たちは近づかなかった。昔、岩和田に美しい海女がいて近くの漁師と恋仲だった。海が荒れれば恋しい男に会えると知った女は、仲間の目を盗んで大あわびに小さなあわびを投げつけては海を荒らし、男と会うようになった。やがて毎日潜るのが面倒になり、七、八日も時化が続くようにと十も二十ものあわびを投げつけたところ、七、八日分の雨風が一度に起こった。漁に出ていた男を助けようと沖へ漕ぎ出した女の舟は、大あわびの辺りで海底に引き込まれ、男も後を追って二人とも浮かんでこなかった。以来この不思議な時化はなくなったが、大あわびは今もいるという。
原典より
夷隅郡御宿町の岩和田の海には、大きなあわびがいて、その殻にふれると海が荒れるといって、海女たちは近付かなかった。—— 房総の伝説(平野馨) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
房総の伝説(平野馨)
『房総の伝説』は、平野馨が安房・上総・下総の旧三国、ほぼ今の千葉県に伝わる伝説を選んで編んだ資料集である。ホトトギスやワラビの由来、片葉の芦や頼朝の箸の杉、弘法の井戸、将門や八幡太郎の話、坂戸神社の人身御供、証誠寺の狸など、動植物・石・池・地名・家・祭りにまつわる伝説を市町村名を添えて記す。はしがきに示す自然伝説・歴史伝説・信仰伝説の三部に分け、解説や論評を加えずに書き連ね、似た話のある土地も併せて挙げる。