銚子丸の雑魚寝で起きた人違い
どんな伝承か
内国通運の通運丸、または銚子丸という外輪の汽船が、東京の高橋を起点にして銚子まで通っていた。船の中ほどに機関室があり、その前後が客室で、薄べりの上に雑魚寝をする。日が暮れると隅に豆ランプがひとつ灯るだけで、機関の震動が絶え間なく続いた。常陸の田舎の盆から銚子丸で帰った若い夫婦のうち、妻が家に着いて帯を解きながら、あんな所でと甘えた声を出した。夫にはまるで身に覚えがない。暗い船中で誰かが妻に寄り、妻は夫と思い込んでなすままにさせていたのだった。大悶着になったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。