客を降ろして便所へ急ぐタクシー
どんな伝承か
昭和五十九年四月四日の夜、S新聞社に勤めるP氏は友人二人と新橋で酒を飲み、会社へ大事な物を置き忘れたと気づいて社へ戻ることにした。西新橋の交差点で個人タクシーを拾うと、近距離にもかかわらず運転手は気持ちよく応じた。ところが車中で鞄を探り直したところ忘れ物は手元にあり、行き先を赤坂へ変えてほしいと頼んだ。すると運転手は、自分は大手町のY新聞社の便所へ寄るところで、いつもそこと決めているから料金はいらない、ここで降りてくれと言う。三人は都庁脇で降ろされ、車は大手町の方へ走り去った。
原典より
自分の所から二十里ほどの後藤野の話。—— 現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。