国道で弁当を広げたトラックの意地
どんな伝承か
高知県高岡郡で、父から聞いたという三十五年ほど前の話。道路がまだ整っていなかった頃、高岡の国道で県交通のバスとトラックが鉢合わせした。行き違うにはどちらかが下がるしかないが、バスの運転手は公共の車だから優先だと考え、相手が退くのを待った。ところがトラックはまったく動かない。にらみ合いの末、トラックの運転手が煙草を吸い始めたので、バスの側も負けじと火をつけた。すると相手は新聞紙を広げて弁当を食べ出した。客に騒がれたバスはついに根負けして後退し、トラックは弁当をしまって急いで通り過ぎたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。