納棺の間際に息を吹き返した銀行員
どんな伝承か
松代町小荒戸の富沢作次は、第四銀行松代支店長を退いて悠々自適に暮らしていたが、急な病であっけなく亡くなった。枕経も読まれ、葬式の段取りも整い、いよいよ棺に納めようという段になって、当人がうなり声をあげて息を吹き返す。驚いた一同は葬儀を取りやめ、看病にかかりきりになった。しかし一週間後、今度こそ本当に帰らぬ人となった。仮死の間に冥土の景色を見たという話は伝わっておらず、何も見なかったのか、語れるほど回復しないまま逝ったのかは分からないという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。