丑の刻に子の霊が並ぶ寺
どんな伝承か
せんどうさんという人が、もらい子の男の子を五つまで育てたが、船に乗せていて川に落とし死なせてしまった。あきらめきれず、じさまとばさまが、死んだ人に逢えるという寺へ参った。丑の刻になるとカタカタと音がして子どもが列をなして現れ、いちばん後ろにその子の顔が浮かんだ。声を出すなと戒められていたのに、たまらず名を呼ぶと姿はふっと消えた。帰り道、寺で会った娘に「無事に着いたと家へことづけてくれ」と頼まれ、訪ねると翌日が葬式の家であった。教えられた野原へ行くと、地蔵のまわりを掃く子や団子を売る店があり、賽銭を上げてもらえないその子だけは何も買えずにいた。夜が明けると野原には大きな鉄釜が一つ残るだけだった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。