義父の死の刻に羽ばたいた虫かごの蝶
どんな伝承か
五十三年九月、夫の父が危篤との知らせを受け、一家で益子町へ向かった。幼い娘と息子は事情がのみ込めず、昼間は虫かごを提げて虫捕りに夢中になり、夕方までにかごには何種類もの蝶が入っていた。その晩、電話で皆が病院へ呼ばれ、留守番の筆者と子ども二人は広い家に布団を並べて休んだ。眠れずにいると、風もなく戸も鳴らないのに、枕元の虫かごで蝶が数秒間激しく羽ばたいた。見てもそれきり静まり返っていた。筆者が時計を見た午前二時ごろは、ちょうど義父が息を引き取った時刻だったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。