父に似たカラスが鳴いた朝
どんな伝承か
昭和四十六年五月のことである。朝七時ごろ、高橋正世が庭の花に水をやっていると、かれた声でカラスが鳴いた。ふと見上げると電柱にカラスが止まっている。すすけた様子といい頭のかたちといい、どこか父に似ているとおかしく思って眺めていたが、その日の夕方、父が危篤だと知らされた。カラスの鳴き方が悪いのは死の知らせだという言い伝えは各地にあり、これもその一例として寄せられている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。