目の悪い老女に聞こえる寺の鐘
どんな伝承か
話者・沢井岱峩(七十六歳)の語り。奈良県宇陀郡大宇陀町守道の寺には、本堂にゴーンと撞く鐘がある。この寺の下に、目の悪くなったおばあさんがいた。話者が子供の時、そこへ同級生を誘いに行くと、おばあさんに「ボン、ゆうべお寺の鐘鳴っとったぞ、今晩枕経あげんといかんのう」と言われた。寺では鐘を鳴らさないのに、彼女のように『ゴーンゴーン』と鐘の音が聞こえる人がいた。霊感か何かのためだろうという。話者は親のかわりに枕経に行き、帰りは一人で提灯を提げて歩くと、提灯の位置によって枕経をあげた仏がついてくるような気がしたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。