死ぬ日を告げた禅源寺の住職
どんな伝承か
村の禅源寺の住職、総崎は、自分は七十六年の寿命を授かったが人の命乞いをして十年縮めたので、六十六歳の何月何日何時に死ぬと決まっている、と日頃から村人に語っていた。誰も本気にしなかったが、その日の一週間前になると、各地に散った弟子たちへ危篤の電報を打つ。駆けつけた弟子が見れば、住職は水を汲み薪を割って元気に働いており、苦情を言われても、命はあと三日だから危篤なのだと涼しい顔をしている。当日は朝から掃除と馳走の支度をさせ、寺総代や村役員を招いて礼を述べ、別れの挨拶をした。読経が終わり最後の鉦を鳴らすと深く首を垂れ、そのまま冷たくなっていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。