奥山の崖下に響く女の悲しい歌
どんな伝承か
鹿児島県熊毛郡屋久島での話。屋久島は海岸にしか人家がなく、奥は山また山で寂しい。宮之浦の者が一里半ほど奥山でバンギを出していた。高い足場を組み、崖の上の大杉を伐り倒して板に挽き、縄でくくっては崖下へ下ろしていた。ある日、家から女が昼飯を持って来ることになっていたが、昼になっても来ないので男は空腹のまま働いていた。女はやっとの思いで崖下まで辿り着いたが、ちょうど男がバンギを下ろしている時で、不意に綱が切れてバンギが女の頭上に落ち、女は即死した。それからそこに幽霊が出て困るといい、遠くで聞くとよい声だがいかにも悲しそうな歌が聞こえるので、長く人が寄りつかなかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。