洗い矢を剣に見立てた見習い士官のいびり
どんな伝承か
名古屋歩兵第六連隊補充隊(名古屋城内)での体験。軍隊では身分に変動があると上官へ報告する制度があり、これを利用した「洗い矢見習い士官」といういびりがあった。新兵が失敗すると「お前は洗い矢見習い士官だ、各班まわって来い」と言われ、銃の清掃道具である真鍮製の洗い矢を上着の剣止めに引っかけ、剣に見立てて各班へ「親告」に回らされる。「歩兵第六連隊第二中隊第五班陸軍步兵二等兵〇〇〇〇〇、洗い矢見習い士官に命ぜられました」と大声で名乗ると「おめでとう」とからかわれ、最後にはパチンと殴られて中隊中の笑い者にされたという。
原典より
昭和二十年二月十三日に飛行予科練習生として入隊した。—— 現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸)
『現代民話考 ― 軍隊』は、松谷みよ子が編んだ、軍隊と戦争をめぐる現代の民話の集成である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きによって寄せられた話をもとに、十五年戦争を中心に徴兵検査から新兵のしごき、戦地、虐殺や飢え、敗戦、収容所、戦犯、軍隊生活の怪談までを収める。巻頭に序文「明日の民話のために」と論考「軍隊考」を置き、十三の部に分けた各話の末に話者と回答者の名と在住地を記す。