昭和十九年の暮れ頃、海軍から呼び出しがきて、私(木工
どんな伝承か
昭和十九年の暮れ頃、海軍から呼び出しがきて、桶の製造販売をしていた語り手と桶屋一人、金具造りの職人一人が軍用車に乗せられた。手拭で目かくしをされていたが、いま考えると千葉県の五井あたりではないかという。あの辺は要塞地帯で一般の人たちは近づけなかった。潜水輸送船の胴体にタガをかけたいが、何を使ってどう締めればよいかと聞かれた。大きな桶にタガをかけて五個ほどつなぎ、鉄のロープで潜水艦が海中を引いていくものだという。桶屋の親方を連れて行かねばできないようでは日本もおしまいだと本気で思った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 軍隊』を小話単位で全712話収録。徴兵・新兵・上官・戦地・戦争の残虐・敗戦・収容所・軍隊の怪談など、軍隊と戦争にまつわる兵士たちの現代民話を全国(一部は戦地・海外)から採集し話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明189話・市区町村判明76話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。