捕虜の肉を肴にした父島の宴
どんな伝承か
昭和二十年三月、硫黄島の守備隊が玉砕すると、父島の陸軍守備隊には次は父島に米軍が上陸するという悲壮な空気が満ちた。その中で一人の陸軍少佐が、士気を高め必勝の信念を養うためと称して、捕虜の肉を肴に宴会を開こうと言い出し、実行した。捕虜が入ると奪い合って試し斬りにし、地中に埋めてあくを抜き、翌日掘り出して宴の肴にすることが毎日続いたという。戦後これが米軍に知られ、父島の陸軍首脳部五人が死刑となった。首謀者の的場少佐は泣きわめいて絞首台の階段を登らず、縛られて運び上げられたという。当時父島の海軍にいた人から聞いた話である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸)
『現代民話考 ― 軍隊』は、松谷みよ子が編んだ、軍隊と戦争をめぐる現代の民話の集成である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きによって寄せられた話をもとに、十五年戦争を中心に徴兵検査から新兵のしごき、戦地、虐殺や飢え、敗戦、収容所、戦犯、軍隊生活の怪談までを収める。巻頭に序文「明日の民話のために」と論考「軍隊考」を置き、十三の部に分けた各話の末に話者と回答者の名と在住地を記す。