父島の隧道に出る看護婦と兵の霊
どんな伝承か
父島には戦時中の砲台やトーチカと呼ばれる地下の穴がそのまま残り、古く長い隧道も何本かある。隧道は野戦病院として使われ、食糧が乏しく飢えた兵が壁にもたれたまま息絶えていったという。そのため島の人からは、隧道の端を歩くのは避けた方がよいと聞かされる。最も長い隧道では、忙しげに行き来する白衣の看護婦の姿が出るといい、第四隧道の入口で写真を撮ると霊が一緒に写ることがあると噂される。島で果てた兵の霊ではないかという。
原典より
回答者・中村博(東京都在住)。—— 現代民話考 12 写真の怪・文明開化(松谷みよ子・現代民話考(立風書房)第十二巻・1996年(平成8年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 12 写真の怪・文明開化(松谷みよ子・現代民話考(立風書房)第十二巻・1996年(平成8年))
『現代民話考 12 写真の怪・文明開化』は、松谷みよ子が一九九六年にまとめた現代民話の資料集で、同シリーズの第十二巻にあたる。雑誌での呼びかけやアンケート、聞き書きで寄せられた話と新聞・雑誌の記事を、心霊写真をめぐる怪異と、明治以降の電信・汽車・電気燈などの新しい文物や流行病に戸惑う人々の話に分けて収める。話例ごとに本文を掲げて各地の類話を分布として並べ、話者や回答者の名と出典を添える。