沈んだはずの漁船が入港した夜
どんな伝承か
昭和三十二年十二月十三日の金曜日、季節はずれの台風にみまわれ、陸前江の島の東方海上で漁船が遭難沈没し、乗員全員が船と運命を共にした。遺体は発見されなかった。その翌年、ある漁船が風浪のため港に避難仮泊していたとき、沈没したはずのその漁船が賑やかな歌声とともに入港し、近づいてきた。あれは幽霊船だから行ってはいけないと止められたのもきかず、一人の漁夫が、やあ、みんな助かっていたのかと言ってその船に乗り移った。とたんにその船はかき消すように見えなくなり、漁夫は海中に落ちてそのまま死んだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和〜平成)
松谷みよ子『現代民話考 ― 偽汽車』を小話単位で全525話収録。汽車・船・自動車などの乗り物にまつわる現代の民話・怪談を全国から採集。狐狸が汽車に化ける偽汽車、船幽霊、タクシーに乗る幽霊などを地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明496話・市区町村判明359話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。