墓地で騒いだ火の玉と船の全滅
どんな伝承か
明治三十五年頃、よそから来た人が指ノ浜の共同墓地の向かいの畑を借り、茅を刈って小屋を建て、そこで寝起きして働いていた。すると毎晩、指ノ浜の墓で大勢の人がホイホイホイとはやし、ガヤガヤと話をする声が聞こえた。何事かと小屋から出てみると、墓の上を光り物がヒョイヒョイと飛んでいた。あちらとこちらで声をかけあいながら火の玉が飛び歩くのを見て、不思議に思っていたところ、指ヶ浜の十数戸の家から十三人が乗った船が暗礁に打ち上げられ、一人残らず死んだ。その人たちの魂が、死ぬ前に火の玉になって出たのだろうと語られている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。