厠の幽霊の正体は哲学をつぶやく学徒兵
どんな伝承か
福岡県北九州市小倉での話。昭和二十年頃のことである。深夜、厠に幽霊が出るといううわさが、高射砲陣地の睦八〇六二部隊有馬中隊に広がった。ところが実態は、学徒出身の二等兵が就寝時刻の後に厠にこもり、ぶつぶつと哲学的なことをつぶやき続けていたのだったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸)
『現代民話考 ― 軍隊』は、松谷みよ子が編んだ、軍隊と戦争をめぐる現代の民話の集成である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きによって寄せられた話をもとに、十五年戦争を中心に徴兵検査から新兵のしごき、戦地、虐殺や飢え、敗戦、収容所、戦犯、軍隊生活の怪談までを収める。巻頭に序文「明日の民話のために」と論考「軍隊考」を置き、十三の部に分けた各話の末に話者と回答者の名と在住地を記す。