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植木物に依て光曜ある事

所在地東京都墨田区
年代寛政期(江戸後期)
登場根岸鎮衛、著者、語り手
出典耳嚢(みみぶくろ)

どんな伝承か

本所の御船蔵の裏手には植木屋が多かった。ある日、供を一、二人連れた老人が植木店を見歩き、古い石台に植えた松の前でしばらく立ち止まって値を聞いた。ひどく欲しそうなので亭主はことさら高値を言い、老人はそれでは要らぬと去った。翌日も来て値を上げて頼んだが、亭主は最初の値でなければと売らず、老人が眺めては帰ることが何度か続いた。亭主が改めて見ても枝ぶりは平凡だったが、見どころがあるのだろうと石台を新しく立派にして植え替え、そのとき松の根から出てきたものを追い払ってしまった。翌日来た老人は驚き、なぜ植え替えた、根から出たものがあったはずだ、今の様子では一銭でも要らぬと言って帰ったという。

原典より

老人大に驚き、「いかなればかく植替しや。右松の根より出しものもあるべし。今日の有様にては一銭にても好なし」といひて帰りしと、其最寄の老人原某はなしね。—— 耳嚢(みみぶくろ)(根岸鎮衛・江戸随筆・怪異・1809年(文化6年)) より引用
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※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません

出典の文献について

耳嚢(みみぶくろ)(根岸鎮衛・江戸随筆・怪異・1809年(文化6年))

『耳嚢(みみぶくろ)』は、根岸鎮衛(守信)が勤めの合間に古老や訪ねて来た人から聞いた話を書き留め、佐渡在勤のころからまとめ直して文化六年仲秋に結びを付した随筆である。武家・町人の逸話や奇談に加え、狐・狸・幽霊・妖獣などの怪異、羽蟻や虫歯・ものもらいを治めるまじない、薬の秘法を、一項ずつ題を掲げて記す。この本文は著者の自叙と巻之一から巻之十まで(巻之四を欠く)の抜粋で、巻末に著者の結びと『耳嚢副言』の一部を置く。

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