船へ這上る娘の幽霊
どんな伝承か
上総国木更津町吾妻の漁業五味栄治郎が、同所沖合の板津鼻付近で漁業中、角帯を締めた男が船底に立っているのを見て発熱し病床に伏した。その後、同所の星野浅治郎も蝶々模様の浴衣を着た髪の乱れた女が船端から這い上がろうとするのを見て仰天し、田淵源之助も同所で女の幽霊を見たという。無理心中した男女の亡魂ではないかと噂された。
原典より
前の事あつて後、同所の星野淺治郎も、又同所海中にて漁業中怪しの女が蝶々模様の浴衣を着て髪振乱し、船のがわより這い上がらんとするを見て仰天して帰つたことがある。—— 幽霊は語る(梶天真・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽霊は語る(梶天真・1938年(昭和13年))
『幽霊は語る』は、梶天真が昭和十三年に編んだ幽霊譚と幽霊論の集成である。葬送の習俗や海外の霊魂観から説く幽霊思想、幻覚や網膜の作用による幽霊の説明、乃木大将や許斐大尉の見た幽霊などの実話、古典や伝説に現れる男女の幽霊・怨霊・生霊、幽霊写真、化物屋敷、霊界通信を集める。三篇に分かれ、第二篇は幽霊を男女・怨霊・生霊・小児の見た幽霊・食物に縁ある幽霊・前知らせなど八項に分類し、巻末を夕張と筑前の幽霊問答で結ぶ。