ぬっと現れた蒼白い頭
どんな伝承か
借家で怪異に悩まされ大病をした語り手は、保養先へ見舞いに来た人の話で、自分が死霊に苦しめられていたことを知った。その人によれば、あの家は長く借り手がなかったが、ある時から人が入って仕事場に使い、やがて女ばかりが残って茶の選り分けをしていた。陰気な日の夕方、早めに仕事を切り上げて帰り支度をしていると、何かがぎいっとひとりでに開き、蒼白い頭がぬうっと出てきた。目にした者は悲鳴を上げ、茶をひっくり返して逃げ出した。家中を調べさせたが、変わったところは何もなかったという。
原典より
……の保養につてゐる……家へ……が見舞かた……た……尋ねて……ての……で、……まで私が死霊に悩まされてゐたことが解りました。—— 幽霊は語る(梶天真・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽霊は語る(梶天真・1938年(昭和13年))
『幽霊は語る』は、梶天真が編んだ幽霊譚と幽霊論の集成で、昭和十三年に文明社から出た。新聞・雑誌の記事や井上円了・柳田國男・高峰博らの所説、古典の文を出典を添えて引き、葬送の習俗や布哇の霊魂観から説く幽霊思想、幻覚や網膜による説明、乃木大将が見た我が子の幽霊などの実話を集める。三篇に分かれ、第二篇は男女の幽霊・怨霊・生霊・小児の見た幽霊・前知らせなど八項、第三篇は幽霊写真・化物屋敷・霊界通信を扱い、巻末を夕張と筑前の幽霊問答で結ぶ。