井戸に落ちた子が吉野川に浮く
どんな伝承か
四国霊場第五番の地蔵寺には五百羅漢があり、その門前に、こがね井とも姿見の井戸とも呼ばれる非常に深い井戸がある。年代の分からない昔、近くで遊んでいた子が井戸枠に上がっていて足を滑らせ、中へ落ちてしまった。人々が駆けつけ、一人が綱で体を縛って降りて水中を探したが、子の姿はどこにもない。確かに落ちたのに不思議だと言い合って皆引き上げたが、数日後、子の亡骸が吉野川に浮かび、井戸の底は吉野川に通じているのかと評判になったという。
原典より
それから数日たってのち、稚児の死体は吉野川に浮いたので、底が吉野川に通じているのかと評判になった。—— 阿波の怪談(横山春陽・郷土怪談・民俗・1958年(昭和33年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
阿波の怪談(横山春陽・郷土怪談・民俗・1958年(昭和33年))
『阿波の怪談』は、横山春陽が昭和三十三年に編み、徳島新聞出版部から発行した郷土の怪談集である。徳島県の各地と土佐との国境の山中に伝わる山女郎、淵や池の主、カッパ、亡霊、火の玉、タヌキやキツネ、大ジャの話を、平安朝の言い伝えから藩政期、明治・大正、昭和の出来事まで、編者が古老に聞き、書物から拾って題ごとに並べる。おわりにでカッパやヘビの話の多い地域や海の話の少なさについて記す。