祖先の霊を語らせる巫女イチッコ
どんな伝承か
明治の末から大正の初めごろまで、行幸田にはイチッコと呼ばれる巫女がよく巡ってきた。神主のような着物に朱の袴をつけた六十歳ほどの人で、髪を後ろに長く垂らしていた。家々を回って仏様を拝み、病人や不幸のある家では見てもらうこともあった。拝むうちに先祖の霊がのり移り、亡くなった祖父母の霊が語り出すので、家じゅうが集まって聞いたという。祖母島でも大正の初めごろ、吾妻方面から来た巫女が庭に竹を四本立てて注連縄を張り、釜の湯に笹を浸して身に振りかけて拝んでいた。有馬や行幸田にはイチッコ塚と呼ばれる所があり、半田にも同じころまでイチッコが来ていた。
原典より
拝んでいる間に、祖先の霊がのりうつり、死んだおじいさんやおばあさんの霊が話をする。—— 渋川市誌 民俗編(市史編纂シリーズ) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
渋川市誌 民俗編(市史編纂シリーズ)
『渋川市誌 民俗編』は、渋川市の市誌民俗編のうち、第六章「民俗信仰」の第一節から第五節の初めまでを収めたものである。人魂・幽霊・ロクロッ首・生まれかわり・死神などの霊魂の話、手をつけてはいけない聖地や耕すと祟る忌地、オサキ使いや狐つき、神かくし、若宮八幡などのたたり、イチッコと呼ばれる巫女や祈禱師、東向き鳥居参りなどの祈願を、市内の大字ごとの聞き書きで記す。はじめにで章全体を解説し、続く節では話に見出しと採集地の大字を添える。