鼠花火だった廃仏毀釈の人魂
どんな伝承か
明治の初め、廃仏毀釈の風潮のなかで下津具村でも神道に改める家が多かった。夏目家が亡くなった身内を神式で葬ると、夏目家の墓地から人魂が出て家の方へ飛んでいくという噂が立ち、神式にしたので仏が浮かばれないのだと言う者まで出てきた。槍の得意な長男の伊禄は、村に来ていた槍の達者な浪人と従兄弟の山崎珉平を誘い、夜の墓山で見張った。すると頬かむりの男が現れ、新しい墓の灯籠の火で何かに火をつけて民家の方へ投げた。人魂の正体は鼠花火だった。一喝すると男は足を傷めながら逃げた。改宗を防ごうとした旦那寺金龍寺の和尚が、上津具の阿弥陀堂の堂守にやらせていたのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。