茶碗に映った碧い眼玉と少女の投身
どんな伝承か
大阪船場の料亭の主人S氏が語った話。知人の十三歳の娘澄は、母が若い頃上海でユダヤ系英国人との間にもうけた子で、憂鬱症を患い、紀州白浜温泉近くの伯母の家で静養していた。毎日海辺で過ごすうち、ある夕方ひどく上機嫌で千畳岩から戻ったが、夕食の最中に突然茶碗を放り出し、碧い眼玉が二つ映ったと叫んで悶え狂った。大阪から母親らが駆けつけた時には、澄は家を抜け出して千畳岩から身を投げていた。部屋を片付けると机の引出しから錆びた銀の小箱が出てきて、母が蓋を開けると中で生々しい碧い眼玉が二つ光っており、母はその場で気を失った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。