猫の試殺と称して謀られた御用商人
どんな伝承か
桐原事件は、予備陸軍二等主計正であった桐原集一が二人の男を謀殺した事件である。最初に殺されたのは陸軍御用商人の岡本祐信で、二人の間には金銭上の秘密があった。大正二年四月十六日、当時桐原が住んでいた四谷区愛住町四十三番地の家に岡本を呼び、靴商の植木音次郎に猫を入れた大型の支那鞄を持参させ、猫の試殺をすると称して家人を遠ざけ、三人で二階で飲んだ末、隙を見て岡本を惨殺して鞄に詰め、植木に棄てさせた。同時に自宅へ放火して火災保険金を詐取した。翌年十一月三日には千葉県津田沼の雑木林で野口善袈裟を刺殺した。岡本の死体は千駄ヶ谷穏田の古池から上がった。
原典より
* 位牌が動く (269)* 亀の子を握ったまま (270)* お墓の掃除 (272)* 位牌と鼠 (273)* じゃれつく犬 (274)* 怪談会の怪異 (275)* お天気祭 (276)*…—— 日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。