店の下から出た戸沢屋の娘の白骨
どんな伝承か
福島の宿場町での話である。江戸の末、戸沢屋という旅籠の娘が行方不明になった。小町と呼ばれた美人であった。目明しは、娘は小間物屋の喜平と契りをもったらしいと言うが、主人は信じなかった。喜平は京へ仕入れに行っており、半年後に戻って問われても、迷惑な話だと否んだ。占い師を頼んでも当たらず、主人自身が娘を探し歩き、喜平の店の前に来ると、店に腰かけた娘がこちらを見ていた。声をかけると娘の姿は消えた。町奉行の許しを得て店の下を掘ると白骨の屍骸が出て、着物の切れ端から娘のものと知れた。喜平は白状した。以来この町では、殺された者は肉親にしか現れない、それも埋められた所に現れると言うようになった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東北怪談の旅(山田野理夫・1974年(昭和49年))
『東北怪談の旅』は、山田野理夫が昭和四十九年に編んだ東北地方の怪談集である。青森・秋田・岩手・宮城・山形・福島の六県に伝わる妖怪や幽霊の話、飢饉と間引にまつわる話、江戸時代の奇談などを、一番から一六三番までの短い話として収める。各話の末尾に県名を記し、恐山や飢饉の記録にふれて東北の怪談と怨念を結びつけるまえがきと、怪談観や霊能者をめぐる回想を記したあとがきを付す。