疏水の暗渠で酒盛りする事故死の五人
どんな伝承か
昭和五十三、四年ごろ、福島市の信用金庫の男女五人が残業帰りに一台の車に乗り、西根堰と呼ばれる疏水の脇で運転を誤って横転し、疏水にはまった。車の幅ほどの水路でドアが開かず、田植え時の水に押されて車は暗渠へ流れ込み、見つかったのは何日も後だった。しばらくして、建前帰りのほろ酔いの大工が暗渠の上の坂を上ると、男女五人ほどが酒盛りをしていて、仲間に入って泥鰌をとろうと引き止める。腰を下ろして煙草に火をつけ、ひと息ついて見回すと、五人の姿はかき消え、暗渠の水音だけが響いていた。大工はそのあと熱を出して一か月寝込んだという。
原典より
今から五、六年前(昭和五十三、四年頃)になるが、福島市のある信用金庫の人たちが残業をしての帰り、男女五人が一台の車に乗って西根堰と呼ばれる疏水の脇を通りかかった。—— 現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。