油壺の夜の海に浮かんだ白い影
どんな伝承か
歌手のジュンとネネが語った体験。四十四年の夏、夜の九時ごろに油壺の海でヨットに乗って遊んでいた。風はまったくなく、月は出ていたが雲が多く、灰色がかった感じの晩だったという。すると水面に、白くもやもやとした人の影のようなものが浮かび上がった。気味悪くなってホテルへ引き上げ、支配人にその話をすると、相手は驚いて、あなたがたも見たのかと聞き返した。なんでもその近辺で大学のヨット部の学生が遭難して死んだらしく、ほかにも、船の水を汲み出す柄杓をくれと頼む声を聞いた者がいるという話だった。
原典より
四十四年の夏の夜の九時ごろ、油壺の夜の海でヨット遊びをしていたんです。—— お化けについてのマジメな話(平野威馬雄・1974年(昭和49年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
お化けについてのマジメな話(平野威馬雄・1974年(昭和49年))
『お化けについてのマジメな話』は、平野威馬雄が昭和四十九年に著した幽霊とお化けをめぐる随筆である。自ら主宰する「お化けを守る会」に寄せられた体験談や、大阪の毎日放送のラジオ番組で聴取者が電話で語った話を軸に、前世や霊媒・降霊実験など海外の心霊研究、井上円了の妖怪論、古い記録に見える犬神などの憑きものを取りあげる。体験談から死後の世界、お化けを呼ぶ方法、昔のお化けへと進む八章立てで、巻末にあとがきを置く。