祈禱師が見た松本丸の難破と生還
どんな伝承か
昭和二十五、六年ごろ、三崎に嫁いで子どもができて二年目の女性の話。夫と若い衆がまぐろ漁船で遠くの海へ出て何日か経ったころ、弁天様の祈禱師のもとで無事を祈っていると、祈禱師が船の難破する光景を見たと言い出した。親方に知らせても取り合ってもらえなかったが、そこへ部屋の無線機がSOSを受け、調べると夫たちの乗る松本丸だった。それから毎日水垢離をして祈り、二か月ほど経ったある日、祈禱師が急に皆を静めて、美しい島が見える、日本の船が皆を助けているからもう大丈夫だと告げた。実際に全員が南の小島の人々に助けられて帰ってきたが、その島の名は今も分からないという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。