古井戸の女を乗せたトラックの居眠り
どんな伝承か
神奈川県の三浦半島で、話の時点から十七、八年前にあったという話。トラックの運転手が、昼は車が多いのに夜中は一、二台しか通らない国道を走っていると、朝顔柄の白い浴衣の女が現れて乗せてくれと頼んだ。三十五、六に見える女を乗せて走るうち、ひどい眠気に襲われ、山側の斜面にトラックをぶつけてはっと我に返った。隣を見ると女はおらず、座っていたシートはびっしょり濡れていた。女の現れた所には古井戸があり、そこへ身を投げた人の幽霊だという。運転手は帰ってから一週間も熱を出して寝込み、今もそこには女の幽霊が出るらしい。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。