浴場の硝子戸に映る青い顔
どんな伝承か
小説家の佐佐木味津三がよく人に話した話である。友人が飯坂温泉の××館に泊まり、十一時頃に湯につかっていると、浴場の硝子戸に、髪の毛をもじゃもじゃと垂らした真蒼な顔が、男とも女ともつかぬ姿ではっきりと映った。それはふらふらと風のように去って消え、友人は一晩でその宿を逃げ出した。話を聞いた出入りの大学生が面白がって朋友と飯坂へ出かけ、同じ宿で夜十一時に湯に入ると、やはり骸骨のように痩せた蒼い顔が硝子戸に映って消えた。学生は飛び出して階段を駆け上がり、途中で振袖姿の若い雛妓とすれ違った。朝、主人に問うと、あれは高等学校の試験に失敗して気のふれた娘で、十一時までは外に出さないのだと答えた。
原典より
* 疫病神 (164)* 座蒲団大の男の顔 (165)* 女花子 (166)* 窓に腰をかけた女 (170)* 結いたての島田髷 (171)* 書物を返しに来る (173)* 華表の額の怪 (…—— 日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫版・決定版・昭和13年編纂(1938年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫版・決定版・昭和13年編纂(1938年))
日本怪談実話(田中貢太郎)/幽霊と怪光の実話/怨霊と祟り・因果/死の前兆と怪音/各地の怪異実話