身請けを止めた老婆と殺された商人
どんな伝承か
南部盛岡城下の井筒屋藤兵衛は、商用で訪れた塩釜の遊女屋で小花という遊女と契り、身請けを望んだ。金を取りに盛岡へ戻り、再び塩釜へ向かう途中、一ノ関で大雨に遭う。旅籠の二階から、雨に濡れたまま断られている老婆を見た藤兵衛は、番頭に小銭を握らせて呼び入れ、風呂に入れてやった。翌朝、老婆は先に発っており、道中で振り返って、小花は性悪だから身請けはよせと告げた。藤兵衛は聞かず、身請金を持って遊女屋へ行き、その夜殺されて死骸を海に棄てられた。老婆が死骸を引き上げ、奉行所に訴え出たという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東北怪談の旅(山田野理夫・1974年(昭和49年))
『東北怪談の旅』は、山田野理夫が昭和四十九年に編んだ東北地方の怪談集である。青森・秋田・岩手・宮城・山形・福島の六県に伝わる妖怪や幽霊の話、飢饉と間引にまつわる話、江戸時代の奇談などを、一番から一六三番までの短い話として収める。各話の末尾に県名を記し、恐山や飢饉の記録にふれて東北の怪談と怨念を結びつけるまえがきと、怪談観や霊能者をめぐる回想を記したあとがきを付す。