発熱で見た熊本城の夢
どんな伝承か
福来友吉が日本女子大学で集めた学生の報告の一つ。ある女学生は風邪などで高い熱を出すと、物見櫓のある城の景色を、普段の夢よりずっと鮮明に夢に見るのが常だった。熊本に勤める兄に誘われ、冬休みに初めて熊本を訪ねた彼女は、着いた翌朝に兄の家の二階から熊本城を眺め、それが熱の夢の城と寸分違わないことに驚いた。家は神戸にあり、城を見たはずはない。帰って父母に尋ねると、彼女が二歳のとき両親は彼女だけを連れて二年間熊本に赴任し、今の兄の家の近くの二階家に住んでいた。乳母や女中はよく彼女を抱いて二階に上がり、城を指さして遊ばせていたという。
原典より
翌日の朝洗面して後二階に登り、不図熊本の城を見ると、不思議なるかな其の光景は彼女の発熱中に夢に見る城の光景と寸分違はぬのである。—— 心霊の現象(福来友吉) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊の現象(福来友吉)
『心霊の現象』は、福来友吉が数年来諸雑誌、とくに弘学館の『ニコニコ』誌に通俗的に書いた文章から、心霊問題にかかわるものを選んで編んだ小冊子である。明治四十三年から長尾夫人・高橋夫人を相手に試みた念写の実験の経過を詳しく記し、夢による知覚や治癒、潜在精神から生じる病やヒステリーの事例を挙げる。念写、希望のニコニコ、「我の能力」と人性、生命学と心霊研究、動物主義、夢、潜在精神、精神的養生の諸篇を収め、各篇を節に分ける。