夢に暇乞いに来た畠山のタマシ
どんな伝承か
霊魂信仰の色濃い下北の大畑町小目名では、死の報せを幻覚として受け取る者が今も少なくないという。昭和三十六年、雪のまだ消えぬころ、営林署に勤める畠山という人が自殺した。その夜明け前、日ごろ行き来していた上司の妻が、畠山の夢を見た。ごめんなさい、という声に戸を開けると、土間にはもやもやとした風船のような青いものが立ち、胸から上だけしか見えない。よく見ると他の人のようにも見えた。それが左の肩をつかみ、うちの仏さまに来て拝んでくれ、と言う。恐ろしさに耐えているうちに目が覚めた。土地ではこれを、タマシが夢に現れて暇乞いに来たのだと語り伝えている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。