石垣の端で手招く見知らぬ若者
どんな伝承か
元検察事務官の天野錚一は、一九八六年八月に脳幹梗塞で倒れ、約二か月間意識不明のまま過ごした。その間に見た四つの光景の一つがこれである。長く続く石垣の端に若い男が座っており、天野を見て手招きしながら「こっちに来い」と何度も言う。知らない人であり、そちらへ行く必要もないと思って誘いを無視した。石垣は濠のような整ったものではなく、そこらの石を積んだだけのいい加減なもので、手前には砂利道のような平らな道が続いていた。場面はいつの間にか終わっていた。彼は後に、あれはあの世への誘い込みだったと解釈している。
原典より
こういう石垣のはじっこのところに、若い男の人が座っているんです。—— 証言・臨死体験(立花隆・臨死体験・ノンフィクション・1996年(平成8年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
証言・臨死体験(立花隆・臨死体験・ノンフィクション・1996年(平成8年))
『証言・臨死体験』は、立花隆が文藝春秋の雑誌『クレア』に連載し、一九九六年に単行本として刊行した臨死体験の証言集である。俳優の安田伸、作家の水上勉、彗星探索家の木内鶴彦、プロレスラーの大仁田厚、映画監督の羽仁進など、病気や事故で死の淵に臨んだ二十三人の体験を、本人や家族からの聞き取りで記録する。各章は人物の略歴と前置きに続けて問答形式の談話を載せ、本人の著書や手記からの引用も交える。