離森の工場をのぞく笑う女
どんな伝承か
離森の長者屋敷には数年前まで燐寸の軸木の工場があった。その小屋の戸口に、夜になると女がうかがい寄り、人を見てげたげたと笑う。淋しさに堪えられず、ついに工場は大字山口へ移された。その後、同じ山中に枕木を伐り出すため小屋を掛けた者があったが、夕方になると人夫がどこかへ迷い出て、帰ってから茫然としていることが度々あった。彼らは後に、女が来てどこかへ連れ出すのだ、帰ってから二日も三日も物を覚えていないと語った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。