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須川の桟道ですれ違った美しい山女

所在地山口県岩国市錦町須川
登場小学校訓導。翌日同行し老女を山女と評した
出典岩邑怪談録

どんな伝承か

ある雨の日、三分一氏の番頭が拠所ない用事で深川村へ行き、ついでに須川村の用も足そうと、宇佐川端の須川の桟道を辿っていった。後ろから足早に来る者があるので道を譲ると、十八九歳ばかりの、立てば芍薬座れば牡丹という女が、紺の蛇の目傘をさし、芳しい香りを漂わせて擦れ違った。山村の者とも都会の者とも思えぬ人品に、番頭は立ち止まり、女が山を廻って姿が見えなくなるや取って返して山路を走り帰り、店に入るなり倒れた。介抱されて正気づき事の次第を語ったが、気分が悪いと臥して三月も病んだ。山女とも、桟道の下の流れで身を投げた者の亡霊ともいわれた。

原典より

或る雨天の日に拠無き用事ありて、番頭一人、深川村 領村ノに行き、序に須川村の用をも足さんとて、宇佐川端須川に桟道を辿り行くに、跡より人の来ると覚えければ、ふり反り見るに、一人の女、足早に来る故に、急用有ならんと思ひ、路を…—— 岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年)) より引用
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※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません

出典の文献について

岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年))

『岩邑怪談録』は、岩国藩士広瀬喜尚の怪談録に後人の増補と続録を合わせ、岩国徴古館が昭和五十一年に発行した資料集である。岩国周辺で人々が出会った化物・大坊主・生首・怪火・狐狸・天狗倒し・幽霊などの話を収め、藤田葆が編んだ『岩国沿革志』のうちの二冊を底本に、なるべく原文のまま新字に改めて載せる。広瀬の本録に、今田純一の追加、藤田の続怪談録と実事談・変死、静間密の付録五話を続け、巻末に語注を付す。

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