魔の踏切で招く踊る女たち
どんな伝承か
品川駅の近くに、魔の踏切と呼ばれる踏切がある。数年前、列車がそこへ差しかかると、暗がりから一人の青年がふらふらと線路の中へ入ってきた。機関手は驚いて急停車し、前途のある身で何をするのかと叱りつけた。すると青年は夢から覚めたように四方を見まわし、不思議なことだと言った。ここまで来ると一面に美しい花が咲いて何ともいえない良い匂いがし、大勢の美しい女が唄いながら踊っていて、こちらを見て一緒に踊らないかと招くので、つい引き込まれて入ってしまったのだという。
原典より
* 怪火に浮ぶ白衣の男 (341)* 隧道内の怪火 (341)* 鉄道線路を走る少年 (342)* 旅客の気絶する隧道 (344)* 新有楽橋の妖異 (344)* 消えて無くなる処女 (345)*…—— 日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。