伊勢土産の小さな大黒像との縁
どんな伝承か
明治三十八年一月一日、日露戦争の終わり頃、牧野元次郎は友人三、四人と大晦日の夜行で伊勢参宮に出かけた。参拝の帰りに土産物店に立ち寄ると、棚に飾られていた小さな大黒様の木像が目に留まり、十二銭五厘で買い求めた。帰りの汽車の中でその顔を眺めているうちに、非常な快感を覚え、「この主義だ」と感得したという。これが牧野のニコニコ主義を唱えるようになった発端であり、大黒信仰との奇縁の始まりであった。
原典より
こうして、汽車の中で屢々大黒さまのお顔を見ております中に私の頭に感じましたのは、ハハアこの主義だな、この主義でなければ不可ぬと、こう感じたのであります—— 日本神異見聞伝(笠井鎮夫・1974年(昭和49年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本神異見聞伝(笠井鎮夫・1974年(昭和49年))
『日本神異見聞伝』は、笠井鎮夫が昭和四十九年に著した霊異の見聞記である。第一篇では、大正期に大本で鎮魂帰神を受けた著者が、霊媒による死者の招霊や狐霊・竜神の託宣、霊石の発掘などを研究会での語りの口調で伝える。第二篇では、慶応三年のええじゃないかのころ尾張・遠江・駿河・美濃・丹後などで起きたお札降りを、旧家の古文書や郷土史家の便り、著者の現地調査から記録している。