高野山の僧だった秋葉山三尺坊
どんな伝承か
和歌山の参沢宗哲は、仙界に通う島田幸安を通じて九州赤山の仙人清浄利仙君に、秋葉山の三尺坊とは何者かを問い合わせた。世に伝わる説では、三尺坊はもと紀伊国の高野山に住んだ僧で、背丈が低かったので三尺坊と呼ばれた。この僧は秋葉山の大神に仕え、火を鎮める祈祷にたびたび不思議な効き目を現した。死後は山霊となり、やがて三尺坊大権現として崇められて秋葉山の神に祀られたという。三尺坊という名は幽界から出たもののようだがどうか、と宗哲が問うと、利仙君はこの説は事実で、三尺坊というのは人の世で付けた名だと答えてきた。
原典より
明問 或説に秋葉山三尺坊と言ふは元紀伊国高野山の住僧なりしが身の丈短き人故に世に三尺坊と称せり、此僧秋葉山大神に仕へ奉り鎮火の祈祷に奇験を現せる事多し、…—— 近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。