三尺坊来臨の夜に舞った消し忘れの提灯
どんな伝承か
慶応三年十月十五日の朝、才一郎は、夢に以前の方が現れ、今晩三尺坊様が来臨されるので清く掃除し、時が来れば知らせがあるから提灯を一つ残らず消し、往来の通行を止めよと告げられたと話した。町代から奉行所に届け、才一郎も呼び出されて事情を述べた。夜、家中も町内も身を清めて待ち、二更近くに才一郎がうとうとし始めたのを合図に、泰治が走り回って燎や家々の提灯を消させた。ところが向かいの中島屋が消し忘れた提灯が一つ、くるくると舞い出して三、四度上下に回って落ち、あとで見ると中の蝋燭が二本とも折れていた。才一郎は五方の来臨を拝したという。
原典より
むかひの家中島屋提灯一ツ消し忘れたりしがくるくるとまひ出し、三、四度上下へ廻りて落ちたり。—— 近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。