水一滴も飲まず平然と断食した才一郎
どんな伝承か
秋葉大権現の御附となることが決まった才一郎は、十二月朔日に御山へ連れて行かれる前に、神から断食を命じられた。十二月朔日になっても断食は続いていたが、様子は普段と少しも変わらなかった。かつて雲水として七日の断食修行をした芙美山禅師は、自分は三日目が格別こたえたのに、この子はすでに三日間水一滴も飲まず、腹の具合も悪そうでないと驚いた。才一郎は、少し腹具合が悪くなってもしばらく眠ればもとに戻り、歩くのも変わりないと答えた。禅師は、三日も断食すれば手足がだるく歩けないものだ、これは神の守りによるもので、もはや凡人の境地ではないと言ったという。
原典より
芙美山大に驚き、三日程断食すれば手足だるく中々歩行など出来るものにあらず、全神の御守りにて其通りなるべし、最早凡境の人にてはなしと申されけり。—— 近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。