神岡の町なかに現れたカモシカ
どんな伝承か
昭和三十年代には幻の動物とされたカモシカが、近年は町なかにまで出るようになった。平成二十四年八月下旬の昼過ぎ、著者が岐阜県飛騨市神岡町夕日ヶ丘の国道四七一号を車で走っていると、道路脇の駐車場に一頭のカモシカがいた。引き返して車を停めたときには、カモシカはもう国道を横切り、集合住宅の脇を抜けて東の森へ逃げていくところだった。神岡は富山県境に近い山あいながら、高校や図書館、病院、スーパーなどが並ぶ町場で、そのただ中に半世紀前の幻の獣が姿を見せたのである。
原典より
シカだらけの国道罠にかかったイノシシ人なつこいことも、あるらしいあのとき山中には何がいたか第9章 氷室と風穴を訪ねて「氷の朔日」土佐国・手箱山の「雪屋」周辺より著しく寒い土地がある—— 村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年))
『村の奇譚 ― 里の遺風』は、民俗研究者の筒井功が平成三十年に著した民俗探訪記である。修験の里の石室、石風呂と焼き石湯、山中の贋金づくり、箕作りの集団や天幕部落、岩窟に暮らした非定住民、猿と猟師、氷室と風穴、産屋、墓制、安倍晴明の墓、狐憑きと犬神など、各地の村に残る習俗と伝承を、聞き取りと文献の両面からたどる。全十三章で、昭和三十年前後の高知市での見聞から説き起こし、「おわりに」では別の出版社で刊行が見送られた経緯を記す。