カラステングがタコを食う
どんな伝承か
初冬、標高二九六六メートルの甲斐駒ヶ岳の五丈小屋は風雪が吹き荒れていた。著者はオーバーシューズにアイゼンを付け、七時に出れば二時頃には戻れるだろうと頂上を目指した。新雪の急斜面を登り、吹きさらしの稜線に出ると、周りより低い石の祠がある頂上に着いたが、寒さに耐えかね早々に引き上げた。下りは七時間半かけた道を二時間あまりで戻ると、小屋の裏で呪文を唱える老婆の声がした。回ってみると白衣の行者が夕陽の方角を向いて数珠をこすっており、駒ヶ岳神社の巫女だとわかり安心して食事の支度をした。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
続 山だ原始人だ幽霊だ(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・1972年(昭和47年))
『続 山だ原始人だ幽霊だ』は、西丸震哉が昭和四十七年に著した随筆集で、一冊の予定を前後編に分けたうちの後編である。ニューギニアやニューブリテン島の未開部族を訪ねた探訪記と原始社会の食生活論に続き、幽霊についての自説、自身や身内が出会った怪談、テレパシー・呪い殺し・雨やみの術の実験談を収める。「原始人」「幽霊」「テレパシー」の三部からなり、カバーと挿絵も著者が描いたとあとがきにある。