南割下水を先へ逃げる提灯の光
どんな伝承か
本所七不思議の一つ。夜中についたり消えたりする怪しい光を見たという話と、夜道を歩くと前方に提灯のような明かりが見え、近づくとぱっと消えてまた前に現れ、それを繰り返しているうちに自分の家に着いてしまうという話が伝わる。どちらも場所は本所の南割下水の近くとされる。紹介者は、照明の乏しかった時代には本当の闇があり、その中ではわずかな光も鋭く大きく見え、他に目のやり場がないぶんそこへ意識が集まる、一種の錯覚だろうと説く。光ではなく拍子木の音が同じように遠のいていく送り拍子木の話が混じることもあるという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪異雑考2-本所七不思議(高橋敏弘・西郊民俗・1988年(昭和63年))
『怪異雑考2-本所七不思議』は、高橋敏弘が昭和六十三年に著し、『西郊民俗』第百二十五号に載った小論である。江戸本所に伝わる七不思議として、足洗い屋敷、片葉の葦、狸囃子、送りちょうちん、あかり無しそば、置いてけ堀、津軽家の太鼓を取り上げ、怪異の中身と伝承地を短く記す。各項に番号を振って並べ、末尾で七不思議が人から人へ伝わるうちに広まった事情を考え、あとに木村博の小文「『火柱』が立つ話」が続く。