御蔵橋の堀で魚を呼び止める声
どんな伝承か
本所七不思議の一つ。釣りを禁じられた堀で竿を出すと面白いように釣れ、魚籠はたちまち一杯になる。ところが帰ろうとすると、人影もないのに置いていけと呼ぶ声がする。魚を戻せば何事もないが、持ち帰れば祟られるという。場所は御蔵橋のあたりとされ、いまでは堀は埋め立てられて小さな原っぱとなり、橋が一つ残るだけである。紹介者は声の主を堀の管理人の老人と見て、釣らないでくれと頼んでも聞き入れられないので、薄暗くなった頃合いに帰る釣り人へ不気味な声を掛け、祟りの噂まで言いふらしたのではないかと推している。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪異雑考2-本所七不思議(高橋敏弘・西郊民俗・1988年(昭和63年))
『怪異雑考2-本所七不思議』は、高橋敏弘が昭和六十三年に著し、『西郊民俗』第百二十五号に載った小論である。江戸本所に伝わる七不思議として、足洗い屋敷、片葉の葦、狸囃子、送りちょうちん、あかり無しそば、置いてけ堀、津軽家の太鼓を取り上げ、怪異の中身と伝承地を短く記す。各項に番号を振って並べ、末尾で七不思議が人から人へ伝わるうちに広まった事情を考え、あとに木村博の小文「『火柱』が立つ話」が続く。