背中に熊の毛が生えた中学生
どんな伝承か
鹿児島市内のある中学で、三年生の山下作一は身体検査のたびに逃げ隠れしていた。校庭の隅で彼を見つけた担任の堀田先生は、人に見られたくない事情があると察し、自分ひとりで検査しようと医務室へ連れて行った。無理にシャツを脱がせると、少年の背中には熊のような毛がふさふさと波打っていた。校医も息をのみ、すすめられて九州大学付属病院の皮膚科で診てもらうと、獣毛母斑という病気だとわかった。効く治療法はなく、前に生えないだけ幸せだと言われたという。年に三万人ほどの患者に一人見つかるかどうかの奇病だと医師は語っている。
原典より
恥かしげにうつ向く山下少年の背中には、熊のような毛がフサフサと波打っているではないか。—— 現代の怪奇-日本列島のミステリー地帯(鈴江淳也・1970年(昭和45年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の怪奇-日本列島のミステリー地帯(鈴江淳也・1970年(昭和45年))
『現代の怪奇――日本列島のミステリー地帯』は、鈴江淳也が前著『日本の奇談』に続けてまとめた、現代の超常現象と奇談のレポートである。桑名の「天狗の初さん」、新幹線の亡霊、京都のタクシーに乗る幽霊客、人魂、原因の知れない奇病、念写と三田光一の透視などを、著者の取材・面談と、大正の新聞から昭和四十年代の週刊誌までの記事で集めて収める。五つの部に分け、あとがきは昭和四十五年三月の日付で、巻末に機関誌などを入手できる団体・研究家の一覧を付す。