屍臭と言われた客間の匂い
どんな伝承か
ローフェが著者の家の客間へ入ってくるなり、鼻をくんくん鳴らして邪霊の匂い、つまり屍臭がすると言った。著者のように気の弱い人間はこの手の言葉に一度は引っかかる。だが屍臭ならいつも漂っていた。隣家に七世帯が同居していて便所がひどく臭く、そこへ著者の家で香を焚くから異様な匂いに変わり、かねて何度も注意を受けていたのである。ローフェはさらに、神道風の棺が夢に現れ白衣の神官が祈っていたと、もっともらしく語った。こうした思い込みが積み重なって新興宗教めいた迷いを形づくったのだと著者は振り返る。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
私の心霊術(長田幹彦・1955年(昭和30年))
『私の心霊術』は、長田幹彦が昭和三十年に著した心霊研究の随筆集である。死後に残る霊や地獄・極楽をめぐる考えを述べ、熊本の家系や安達謙蔵との交わり、東京放送局の文芸顧問だったころの回想、霊友会など戦後の新興宗教への批判、前著『霊界』への反響と自らの信仰を語る。「心霊科学の来世観」「霊界の構造」「ぼくの信仰」などの章からなり、末章「ある霊媒の生態」では霊媒服部との実験とそのトリックの顛末を描く。